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慢性膵炎

慢性膵炎とは

慢性膵炎とは?

慢性膵炎とは、膵臓で作られる消化酵素(膵酵素)が活性化されて、自分の膵臓組織をゆっくりと溶かす慢性的な炎症です。最も多い原因は、長期間の大量飲酒ですが、原因がよくわからない慢性膵炎もあります。膵臓で作られた消化酵素は食べ物を消化しますが、通常は活性をもたない不活性型として作られます。しかし、飲酒などが原因で膵液中のたんぱく質の内容が変化したり、膵液が粘っこくなったりして、その結果、膵液の流れが悪くなることで、消化酵素が活性化され、自分自身の膵臓組織を消化してしまいます。そして、正常な細胞が破壊されて、代わりに線維化が起こり徐々に膵臓の機能が低下していきます。慢性膵炎は徐々に進行する病気で、気づかないうちに病気が進行して、消化吸収不良や糖尿病などではじめて慢性膵炎と診断される患者さんもいます。

健康な膵臓健康な膵臓
慢性膵炎の膵臓慢性膵炎の膵臓

慢性膵炎では、膵石が膵管を詰まらせ、不規則に膵管が拡張しています

慢性膵炎の原因はなんですか?

男性では、飲酒が原因のことが最も多く、女性では、原因不明の特発性が多いといわれています。慢性膵炎の原因としては、約半数はアルコールが原因とされます。飲酒量に比例して、慢性膵炎を発症する危険性が高くなります。一日の飲酒量が純エタノールで換算すると80g以上(日本酒で4合弱、ビールで中瓶4本)を摂取する多飲者は特に注意が必要です。アルコールが原因の急性膵炎になった人は、禁酒することが慢性膵炎の発症を予防するために必要不可欠です。遺伝性膵炎という病気がありますが、この異常があると約半数の人が慢性膵炎になります。しかし、家系内で慢性膵炎の人が多い場合を除いて、その頻度はまれですので、慢性膵炎が遺伝することを心配する必要はないと考えます。

慢性膵炎の症状はどのようなものがありますか?

慢性膵炎の典型的な症状は、上腹部痛や腰背部痛です。腹痛は、食後数時間して現れ、前かがみになると軽くなる特徴があります。約80%の患者さんが腹痛の症状を訴えます。

慢性膵炎が進行するとどうなりますか?

膵臓は、消化の働きをする膵酵素を分泌する(外分泌機能)働きと、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンを作る(内分泌機能)2つの働きを持っています。慢性膵炎が進むと、これら2つの機能が次第に低下してきます(移行期)。さらに進行すると、膵臓の組織が線維に置き換わり、膵臓の機能が著しく低下し機能障害が体の症状として現れてきます(非代償期)。膵外分泌の機能障害では、消化不良に伴う下痢、脂肪便、体重減少、また、膵内分泌の機能障害では、糖尿病の悪化、それに伴う口渇や多尿などの症状が現れます。慢性膵炎を放置しておくと、消化不良により栄養状態が悪化し、糖尿病と相まって免疫機能が低下していくといわれています。

慢性膵炎は膵がんのハイリスク

慢性膵炎を放置しておくと、消化不良により栄養状態が悪化し、糖尿病と相まって免疫機能が低下していくといわれています。厚生労働省の研究では、慢性膵炎の患者さんの癌による死亡は、一般の人と比べ2倍と高率で、特に、膵がんによる死亡が7.84倍と著しく高いことが報告されています。慢性膵炎と最初に診断されてから2年以内は、検査でははっきりと見つからない膵がん(潜在する膵がん)によって慢性膵炎と診断されている可能性があります。したがって、慢性膵炎を治療することは、膵がんを防ぐことにもつながります。

慢性膵炎の診断と治療

慢性膵炎の診断はどのようにするのですか?

腹痛や背部痛などの症状に加え、血液検査や膵機能検査、画像検査を行い総合的に診断します。血液検査や尿検査では、アミラーゼ、リパーゼなどの膵酵素の異常が診断の手掛かりになります。画像検査では、CT、MRI、腹部エコーなどで、膵臓の委縮や膵管の拡張、膵石などの存在が診断につながります。

慢性膵炎の診断項目(慢性膵炎臨床診断基準2009)
  1. 特徴的な画像所見:膵管内の結石、主膵管の不整な拡張と不規則な分枝膵管の拡張 など
  2. 特徴的な組織所見:膵実質の脱落と線維化 など
  3. 反復する上腹部発作
  4. 血中又は尿流膵酵素の異常
  5. 膵外分泌障害
  6. 1日80g以上(純エタノール換算)の飲酒歴

慢性膵炎の治療は?

腹痛を主な症状とする時期の治療は、禁酒と脂肪制限が基本となります。消化吸収が悪い場合は膵消化酵素剤の内服、それに加え糖尿病の治療、特にインスリンを使用した治療を行います。慢性膵炎は経過が長い病気で、一生付き合っていくつもりで治療をお願いしています。さらに、喫煙も慢性膵炎の進行を早める危険因子として知られており、禁煙も重要な治療となります。禁酒や食事制限で改善しない場合は、内視鏡的な治療や外科手術によるドレナージ治療を行う場合があります。

アルコールは、少しは飲んでもいいでしょうか?

慢性膵炎は膵臓の炎症を繰り返す病気のため、長い目で治療していく必要があります。治療を受けている患者さんは明らかに病気の進行が抑えられますので、がんばって治療を継続してください。慢性膵炎は、アルコールが原因のことが多いですから、一般的な治療に加え、禁酒を守ることが大変重要です。

アルコール量の目安

1日の飲酒量が純エタノール換算で80g以上は危険信号
純エタノール量 20g程度のお酒
日本酒 1合 ビール中瓶1本 ワイン240ml(グラス2杯) ウイスキーダブル1杯

慢性膵炎の内視鏡治療とは?

膵管の中にできた膵石を内視鏡で除去する「内視鏡的膵石除去術」と、慢性の炎症で狭くなった膵管を広げる「内視鏡的膵管拡張術」などの治療があります。いずれも膵液のうっ滞をとり、膵臓に炎症を少しでも抑えることを目的としています。膵石は、膵管内に充満していることが多く、内視鏡では完全に膵石がとり切れないことが多いのが問題です。

慢性膵炎の外科手術とは?

慢性膵炎の外科治療は、薬による治療や内視鏡治療でも膵炎に伴う腹痛などの症状が治まらない場合や、膵臓機能の温存を目的に行われます。また、膵がんとの鑑別が付かない腫瘤を形成するような慢性膵炎もあり、その場合には、手術が選択されることもあります。

慢性膵炎の治療は、原則内科的な治療です。ところが、断酒や薬物治療を十分に行っているにもかかわらず、慢性膵炎が進行している状況では、外科手術も選択肢となります。外科手術の治療の目的は、膵管のつまりをとり(膵管ドレナージ手術)、膵臓の炎症を少しでも抑えて糖尿病の進行を防止し、くわえて、膵外分泌機能を温存することにあります。慢性膵炎を治すための治療ではありません。そのため、禁酒を含めた内科的な治療は並行して行う必要があります。また、慢性膵炎の患者さんは膵がんのリスクが高いことが知られていますが、膵切除、又はドレナージ術を行うことで、膵がんの発生を低下させる報告されています。

膵ドレナージ手術 膵管空腸側々吻合術

太くなった主膵管を切開し、空腸を膵臓の横方向に縫い合わせます。持ち上げた空腸ともう一方の切り離した空腸を図のように縫合して終了です。バイパスを行うことで、膵液のうっ滞が解消され、内分泌機能、外分泌機能の両方を温存し、機能低下していくことを防ぎます。

膵ドレナージ手術 膵管空腸側々吻合術

最後に

内視鏡治療と外科治療のそれぞれには、長所と短所がありますので、治療の進め方は専門医とご相談ください。慢性膵炎は、進行を止めることは難しい病気ですが、進行を遅らせることは可能です。禁酒をはじめとする日常生活の管理、適切な薬物治療を行い、膵臓機能をできるだけ大切にいたわっていただきたいと考えています。

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